【事例5】キーパーソンも入院すると、お金が動かせなくなる。
こんにちは、ヒナタザウルスです。このブログでは、MSWとして関わった事例や思う事、MSWに関わる本や、あんまり関わらない本も含めて紹介させていただいています。
今回の事例は、MSW(Medical Social Worker:医療ソーシャルワーカー)である私に、退院調整は本人のお金を「動かす」ことができなければ、進めることができないことを教えてくれた事例です。なお、事例に関しては特定を避けるために多くの情報を変えておりますので、一部フィクションであるとご理解いただきながら、実際に自分が相談員だったらと思いながらお読みいただければと思います。
救急車で運ばれた男性がいて
ある日、救急車で70代男性がいらっしゃいました(以下、Aさん)。Aさんには妻子がおらず、入院したことのでの各種手続きや、連絡先(キーパーソン)には、妹さん(以下、Bさん)になっていただきました。Bさんも結婚されておらず、お2人は同じアパートの違う部屋に住まわれていたとのことでした。
Bさんは、Aさんの入院費等の支払いのために、Aさんのお金をどうにか下す必要があり、(Aさんは体調的にしばらく話せそうもなく、BさんはAさんから暗証番号等も聞いていませんでした。)Aさんの通帳や印鑑などを持ち、銀行へ行かれるとのことになりました。ただ、Bさん自身も、精神的に病気をお持ちであり、銀行に一人で行けないので、一緒に来てほしいと言われ、一緒に銀行に行きました。
行った先の銀行で、Bさんは、Aさんの通帳等を持ってきて、本人が入院中であり、妹であることがわかる書類があれば、手続きは可能だろうとお答えいただけました。(当時の対応なので、今はわかりません。)
この時点で、貯金額もしっかりあることがわかり(記帳した際に500万円以上ありました。)退院先がどのような施設でも、Aさんの口座のお金をBさんに下ろしていただくしかないと思っていました。
ある日、精神科病院のMSWより連絡をいただき
Aさんの治療は時間がかかり、相談員として、Bさんと一緒に銀行にいくべきかなと、なんとなく考えていたころ、近郊で横のつながりがある精神科の病院のMSWより連絡をいただきました。
内容としては、Bさんが入院したこと。Bさんはもともと精神的にAさんに依存していた方で、Aさんのキーパーソンは難しいこと。現在は退院の目処が立たないほどの状態であること。横のつながりがあることで情報をいただけ、とてもありがたいお話でしたが、Aさんの担当MSWとしては、かなり困ってしまいました。
他の親族の方に連絡をしよう。
こうなると、他の親族の方に連絡しなければなりません。Aさんには、幸いにもかなり理解のある姪御さんがいました。(以後、Cさんとします。)
病状の説明や、日用品の相談はCさんが受けてくださいました。ただ、入院当初から気にしていたAさんのお金を出すことは、Cさんではできませんでした。
また、入院当初と比べて、Aさんの体調も認知面も悪くなり、ご自宅への退院が絶望的になってきていました。
退院調整を考えると
退院調整を開始したのですが、まずは整理です。Aさんは当院入院中、判断能力なし、お金出せず、入院費もCさん建替中。Bさんは、精神科入院中、会話は可能だが、判断能力なし、お金はCさんが管理している。という状況。
一旦、CさんにAさんと会っていただき、その上で、後見人の手続きをすることとなりました。(この時点で、Aさんが暗証番号をCさんに教えてくださればよかったのですが、Aさんは頑なに教えてくださらなかったようです。)
また、当院の入院費と大きく額の変わらない退院先(Cさんに立て替えていただくのも、なかなか厳しい状況ではあったので)を探すことしました。
より具体的には、施設に「数ヶ月で後見人が着くまでは、安くして欲しい」という無茶なお願いをしました。
結果的には、事情を聞いてくださり、受け入れてくださる施設があり、そちらに入所(退院)となる事ができました。
おわりに
この事例で、当然ではありますが、銀行に預金があるだけでは、動けないという事実を痛感しました。
姪御さんや、施設の相談員さんがかなり協力的だったのでよかったですが、人に大切な事を「教えておく」事の大切さを学びました。
以上、MSW(医療ソーシャルワーカー)ヒナタザウルスのブログでした。
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