【コラム】相談員はどこまで支援すべきか。

コラム

『あきらめ』ということほど言い易くして行い難いことはない。それは自棄ではない、盲従ではない、事物の情理を尽して後に初めて許される『魂のおちつき』である。

 こんにちは、現役MSWのヒナタザウルスです。このブログでは、MSWとして関わった事例や思う事、MSWに関わる本や、あんまり関わらない本も含めて紹介させていただいています。

 これは、種田山頭火さんの「赤い壺」という詩の、冒頭の抜粋です。

 いきなり、詩の紹介で申し訳ありませんが、この言葉は、私が福祉の仕事をする上で、何百回となく支えてくれた言葉です。今回は、コラムとして、とても好きなこの言葉を紹介しながら、相談員の葛藤をお話したいと思います。

相談員は、どこまで支援すべきか。

 MSW(Medical Social Worker:医療ソーシャルワーカー)の仕事をしていると、「どこまですべきか」という葛藤を抱えることが、非常に多いです。少なくとも私はそうでした。

 たとえば、家族に「うちのおじいちゃんは、入院して落ち込んでいるから、毎日でも会いたいです。でも、コロナの影響で面会は禁止でしょう?相談員さん、毎日話しかけてください」と言われることがありました。

 私が当時居た病院は約250床。決して業務に余裕がある状況ではありませんでした。ここで「はい」と2つ返事で答えるわけにはいきません。しかし、家族さんなりに、入院した患者さんが心配だから、このようなお話をされるのです。「そんなことはできません。」とだけ答えるのが正解とも、私は思えませんでした。

 そんな時に私は「なかなか難しいですが、業務の合間に、可能な範囲でお声かけしますね。」といったお答えをします。ただ、この「可能な範囲」というのが難しいのです。完全に個人の感覚になってくるからです。相談員には、このように自分なりの基準で対応しなければいけない場面が多々あると思います。

身寄りなしの方の支援は特に、相談員次第。

 特に、身寄りなしの方は、場合によっては頼れるのは「私だけ」という場面がありました。何度も、病院内で「またKP(キーパーソン)がMSWなの?」と言われるような状況でした。

 例えばですが、身寄りなしの方の特別定額給付金(新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関連、10万円を配られたものです。)の申請を手伝ったこともあります。逆に、身寄りなしの方に、「外出したいから付き添ってくれ」と言われて、何度もお断りをしてきましたし、ご家族の要望に応えることができないことも多々ありました。

 相談員として、ご本人を支援するときに、「どこまですべきか」は本当に葛藤するところです。

 ただ、その支援が「すべきこと」なのかという尺度で考え、「すべき」と思ったことをしてきたつもりではあります。

相談員として戦う同志の皆さんへ。

 福祉職全般で、また相談援助職全般で、「もっとしてあげられることが」という気持ちを持たれる方が多いかと思います。このような気持ちを持つことは当然であり、それ自体は悪いことではありません。ただ、自宅に帰った後まで悩んだり、どこまでしても際限のない援助に埋没して、バーンアウト(仕事で燃え尽きてしまうこと)される方々も多くいらっしゃいます。支援する側が崩れてしまうと、だれも救われません。

 それに、やはりいくら「このようにした方が絶対によい」と支援しても、届かない方もたくさんいらっしゃいました。そのような方への支援は、本当に精神的に辛いものです

 そういった方々を見ながら、私が私なりに「無理せず」支援できたのは、冒頭に紹介する言葉があったからです。自分の中で一定の尺度を与えてくれました。

 MSWとしてすべきだと思った支援、山頭火さん的に言えば「物事の情理を尽して」いるのであれば、「魂のおちつき」が許されると思っています。

相談員としていくつもの事例で、もちろん後悔することはありました。それでも、この種田山頭火さんの詩をかみしめながら「自分なりに支援をした後に許される、魂のおちつきだ。今回の支援はあきらめる。」と思うことにしているのです。

 支援に悩んでいる方に、無理をしすぎないでほしいという願いを込めて、この言葉を引用させていただきました。

おわりに

 私がこの、種田山頭火さんの素晴らしい言葉に出会えた経緯に、もう少しエピソードがあるので紹介させてください。

 私は、お恥ずかしいことに本当に字が(とても)汚く、成人してから「ボールペン習字」を習うことにしました。その時、近所に住んでいらした、昔からよく知っている習字の先生に相談しました。すると「せっかくだから、子どもの課題のようなものではなく、意味のある言葉で練習しよう。」とおっしゃっていただきました。そして、この詩をとても綺麗に書いたものを手本でいただき、私が書いたものを添削していただきました。

 そのため、私はこの言葉を、意味もかみしめながら数十回書き、自分で一番うまく書けたと思ったものを、しばらく自分の机に張っていた記憶があります。

 最近は、意味合いだけを自分に落とし込んでいたので、このブログを書くために数度読み直しているのですが、改めて読んでも、いつ読んでもいい言葉ですね。いまのタイミングで見ても刺さるものがあります。

 特に、「魂のおちつき」というフレーズが素敵ですよね。

※ 写真の色紙は、先生の字です!言葉の意味合いが伝わる優しい字ですよね。思わず載せさせていただきました。

〈 ※ 相談員として、後悔をもった事例。→ 【MSWの事例紹介】タバコへの依存が支援を壊すこともある。

以上、MSW(医療ソーシャルワーカー、社会福祉士)ヒナタザウルスのブログでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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