【MSWの事例紹介】急性期の病院にずっと居たいと言われてしまって。

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【事例17】退院先を合計10か所ほど見学に行かれた事例。

 こんにちは、現役MSWのヒナタザウルスです。このブログでは、MSWとして関わった事例や思う事、MSWに関わる本や、あんまり関わらない本も含めて紹介させていただいています。

 今回の事例は、MSW(Medical Social Worker:医療ソーシャルワーカー)として退院調整に苦戦し

葛藤した患者様です。なお、事例に関しては特定を避けるために多くの情報を変えておりますので、一部フィクションであるとご理解いただきながら、実際に自分が相談員だったらと思いながらお読みいただければと思います。

自宅からの入院とは思えないほど体調が悪い状態で入院されました。

 今回の患者様(Aさん)は、ご自宅からの入院でいらっしゃいました。高齢(80代)の女性。褥瘡(いわゆる床ずれ)も大きく、ご自宅ではなかなか対応が難しいように見受けられました。

 入院直後に、息子さんたちに「介護保険」の案内を行い、「自宅以外の退院先」も選択肢に入れられるようにと考えていました。

〈 ※ 介護保険について → 【コラム】介護保険について 〉 

 ただ、数日後に、息子さんに「介護保険」の 申請の進捗を伺うと、「そのうち申請をしようかなと思っていました」とのこと。病院では治療が終えたら退院になってしまうので、早く申請をした方がよいことを再度案内しました。

 介護保険の申請を家族が家族の都合で進まないことは多く、MSWとして悩まされることもあります。ただ、こちらの説明不足が原因の可能性が高いので、繰り返し案内をするしかありません。

入院期間が延びてきて。

 入院の期間が延びてきて、退院調整を進める段階となりました。先生からの病状説明があり、ご家族と相談しましたが、ご家族様としても、ご自宅で過ごされるのは難しいとお考えでした。本人もすでに意思疎通があまりとれる状況ではなく、いくつかの施設や病院を退院先として、ご家族に提案させていただきました。

 ご家族は、お話としてはそれなりに理解もあり、見学も積極的に行ってくださりそうでした。事実、この後に施設や病院で書類上の受け入れが可能と言われたところには、すぐに見学に行っていただけました。

ここからが、難しいところです。

 退院先の見学についてですが、それなりに条件を絞ったうえでの提案なので、多くのご家族さんが3,4か所ほど見学に行っていただくと、行き先が見つかります。距離や物理的な条件を(MSWが正しく聞き取れていれば)ベストだと思うところから数か所提案したら、以後、それ以上のところが提案できることは難しいからです。

 ただ、今回のご家族は、合計10か所を超える見学を結果的には行って、それでもなかなか退院先が決められないという状況でした。

 というのも、ご家族様からすると、ベストだと思う退院先がなかったのです。なぜなら、いまの入院している環境が、家族として望ましいものだったから。

 家に帰れず、施設でなにか楽しんで行うことが難しそうとなると、現在過ごしている急性期の病院が、医療的な安心を、比較的安価で得られる場所と言えてしまいます。

 もちろん、私たちは「急性期の病院」には長くいられないという事をお話するのですが、この説得は非協力的な家族へは説得しやすいですが、とても協力的な家族にはなかなか響きません。

 家族は、私が見学に行ってほしいとお伝えするとすぐに行ってくださり協力をしてくださる家族に、私から説得することがないのです。

 12か所ほど合計で見学されたころに、さすがに近郊で可能性があるところは見終えた状況となり、そのうちの1つへと退院されていきましたが、そこがご家族としてベストだったのかなと思うところはありました。

ご家族の狙いはなんだったのだろうか。

 ご家族としては初めから「なるべく長く今の状況を保とう」とされているように思える言動も、数度ありました。初めの介護保険の申請時の違和感も、ここに繋がるように思います。

 10か所を超える退院先への見学も、批判を恐れず言えば「時間を稼いでいる」ようにも見受けられました。私自身は、熱心に見学に行かれる姿を見ながら、そう思いたくなかったところもあったのかもしれません。それに、実際にそれなりの手間をかけて見学をしていたので、実際にご家族として納得のいく退院先がなかったのだなと思います。

 ご家族からも、「この病院にずっと居たい」というコメントを何度かいただいていました。

 ただ、本心はどうであったとしても、ご家族が決断したタイミングにご家族の希望する退院先に退院をすることができました。

 これが、なによりのよかったことだと思っています。

おわりに

 病院の事情と家族の願いの板挟みになることは、急性期のMSWとして非常によくある状況です。このことは、今後も永遠の相談員が抱える葛藤になると思います。

 だからこそ、「調整」が必要になるのです。板挟みのなかでベストを模索するのは、私たちにできることだと思っています。

 その中で、「非協力的」な家族ばかり目につきますが、「協力的だからこそ、相談員を悩ませる」というケースがあるのだと思った事例でした。

以上、MSW(医療ソーシャルワーカー、社会福祉士)ヒナタザウルスのブログでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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