自宅でペットシーツを敷いていました。【MSWの事例紹介】

事例イラスト 事例編

【事例9】~家族内での最重要人物はだれなのか~

 こんにちは、ヒナタザウルスです。

 今回の事例は、MSW(Medical Social Worker:医療ソーシャルワーカー)として関わった中でもっとも「母は強い」と感じた事例です。なお、事例に関しては特定を避けるために多くの情報を変えておりますので、一部フィクションであるとご理解いただきながら、実際に自分が相談員だったらと思いながらお読みいただければと思います。

入院した女性がいらっしゃいまして。

 ある日、60代後半の女性(以後、Aさん)が救急車で入院となりました。疾患としてもいくつかあったのですが、まず歩ける状況ではなく、自宅でも数か月前から歩けていないとのことで、下半身の筋肉もかなり衰えていました。私は入院時のスクリーニングから、かなり自宅は厳しいのかなと考えていました。むしろ、ほとんど動けないなかで、どのようにご自宅で過ごしていたのかなと思い、翌日から情報収集を行いました。

ご自宅での状況はなかなか壮絶でした。

 MSWとして、情報収集は「本人から」と「周辺の方から」の2パターンありますが、特に介護保険を取るレベルの方だと、周辺の方からまず、お話を伺うことが多いです。今回は、ご家族は夫と息子さんが同居でご自宅にいるとのことでした。ただ、なんどか電話してもなかなか繋がらず、つながっても要領を得ず、介護保険等の説明も「おかあさんは、なんていっていますか」と仰るだけで、話を進めることができませんでした。

 そのため、ご本人にお話を伺うことにしました。結果的にはご本人から、驚くほど壮絶なご自宅での状況が伺えました。ご自宅には、やはり夫と息子さんがいらっしゃるとのこと。ただ、もう何十年もAさんが家族の意思決定をすべて行ってきたこと。夫も息子さんも、Aさんに頼りきりで、自分では何も決められなかったとのこと。どうやって救急車を呼んだのかを伺うと、家族には無理だと判断し、近郊に住んでいる親族に連絡し、呼んでもらったとのことでした。

 Aさんは、自分では立てなくなっても自宅の家族を守らなければいけないという意識を強くもち、誰にも頼らず過ごしてきていたのです。強い精神力を感じます。

 しかし、数か月ほとんど寝たきりとなれば、排せつなどをどうしていたのかが気になるところです。夫や息子の協力を得られれば、どうにかトイレに連れて行ってもらっていたようですが、難しいなと思う時には、家族に自分の下にペットシーツをひかせ、どうにかしていたようです。驚きます。

「介護保険を取って施設を探すのかな~」程度に思っていた私の甘い読みは破られ、どうしようかと再度考えていきました。

ご自宅へどうにか帰りたいとの希望を受け。

 Aさんと再度相談し、どうしようかと考えました。Aさんが心配した通り、ご自宅で家族二人はなにもできず、食事もコンビニで済まし、家のなかでずっと過ごされているとのことでした。

 ご自宅でどうにか過ごせないかと考えましたが、まず、介護保険の申請は行いました。(本人に記入していただき、申請しました。)また、主治医の先生に、現状を踏まえた相談を行いました。先生としては、体調は定期的に外来に通い、しっかりと薬を飲めば、自宅で過ごすことは可能だろうとのことでした。次に、リハビリのスタッフに状況を伺いました。入院中は食事の制限により、体重もコントロールできているため、しばらく本人がしっかりとリハビリを行えば、トイレはいけるようになりそうとのことでした。私にとって、このお2人は本当に信頼できる方々なので、本人にもその旨をお伝えしました。

 そのうえで、自宅で安心して過ごせるように、ケアマネージャーさんを探してAさんの事情をはなしお願いし、福祉用具手配を頼みました。

Aさんは「帰らなければいけない」という一心で、リハビリをかなり熱心に行い、結果的には入院の少し前より動けるようになったくらいでした。

 ケアマネージャーさんも迅速に対応してくださり、無事にご自宅へ退院でき、本当にほっとした事例です。

ご家族の中で、精神的な支柱の方が入院することもある。

 年齢や、性別に関係なく、ご家族の中で完全に「精神的な支柱」となる方がいることがあります。とくにそのような方が入院した場合には、退院調整にご家族が頼れない場合もあります。

 この事例は無事にAさんが回復していったので、本当によかったのですが、頼る人が体調をわるくしてしまうという状況が起こることもあります。

 そのようなときの、どのように支援するのかも、MSWにとって課題になるのかとは、思います。

「精神的支柱」が入院した事例 → 第15回 救急車に自分が乗ってきちゃいました。

おわりに

 この事例の中で一番印象的だったのは、Aさんが入院しているにも関わらず、Aさんの方が常に、夫と息子さんの心配をしていたことです。

 早く退院しなければであるとか、トイレくらい行けるようにならなければ、他の家族が心配だという、「母の強さ」みたいなものを垣間見たような気がしています。

 また、介護保険などを使えば状況を改善できる可能性があるにも関わらず「入院するまで」誰にも頼らない方もいらっしゃいます。ご本人のプライドが傷つかない程度にサービスの導入を提案し、可能はかぎり継続可能な環境を整えて、退院へ繋げて行けたらと思っています。

以上、MSW(医療ソーシャルワーカー)ヒナタザウルスのブログでした。

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