【書評】「ぼけますから、よろしくお願いします」を読んで

MSW関連の本の紹介

【本の紹介】泣けて、笑えて、介護を知ることができます。

 こんにちは、現役MSWのヒナタザウルスです。このブログでは、MSWとして関わった事例や思う事、MSWに関わる本や、あんまり関わらない本も含めて紹介させていただいています。

 今回は、「ぼけますから、よろしくお願いします」を読んでブログを書かせていただきます。

 著者:信友直子さん、出版:新潮社さん

 この本は、泣けて、笑えて、感動して、福祉の仕事をしてる人ならいくつもハッとさせられる本でした。以前に話題になっていた本ですし、今更ではあるのですが、気になっていてやっと読むことができました。

「はじめに」から、心揺さぶられます。

 私は、日ごろMSW(Medical Social Worker:医療ソーシャルワーカー、以下MSWで統一)として働いていて、介護現場に近く働いているにも関わらず(だからこそ、想像しやすいのかもしれませんが)本当に、心揺さぶられ、「はじめに」から「あとがきにかえて」まで、介護の苦悩がしっかり詰まった本です。

 ドキュメンタリーでありながら、練られた小説のようにドラマチックさがあり、5回は泣き、8人には薦め、読んだ後、しばらくこの本が頭を占めていました。
それくらい印象的な本であり、内容を始めて読む方が感動できると思うので、ネタバレを避けて、思ったことを書いていきます。

お父さんが最高に「いい男」

 まず、初めに強く思ったことから書きます。表題の「ぼけますから、よろしくお願いします」と話す方は、作者さんのお母様です。お母様が認知症となり、いろいろな苦悩を感じながら、娘(著者)が記録されていたものを中心に、本にまとめたものだと思われます。
 ただ、私にはこの本の(このストーリーの)功労者はお父様であることに異論はないと思います。

 日頃、福祉職として、家族のだれが認知症を含む「福祉サービスが必要な状況」になる方のお話はたくさん伺います。

 中でも、実際に同居をする方の苦悩、葛藤、苦しみを伺うことが多いです。
 例えばですが、体調を崩して入院し、介護が必要な状況になったときに、家に帰って大丈夫なのか、はたまた福祉施設などを探して行くのか。同居の家族さんの心や身体、時間の余裕がどれだけあるかによると思います。
 この本でも、「老老介護」という言葉が何度か出ていますが、とくに介護をする側が高齢者(この本のお父様はまさかの90歳越え)である場合、つい私は、「ご自宅で過ごせますか?」と考えてしまいます。
 ただ、この本のお父様は、医療的に不可能になるまで、自分で家事も介護も全て行っていきます。

 そのかっこいいこと、強いこと、本当に涙が出るほど「いい男」なのです。

 私はMSWとして、「家族が無理をするくらいであれば、プロの施設にはいる」事を推奨することが多いです。施設に預けることが一概に良くないことと、というよりは、「家で見ることが素晴らしいことで、褒めるべきだ」というような考え方に縛られて、介護者の生活が破綻していく例を見ることもあり、「無理を強いることはよくない」と思います。

 ただ、このお父様は「楽しんで」いろいろやられているところもあるなと思いました。

 その意味でも、とてもかっこいいお父様です。

家族にとっては、「決断の連続」

 この本の中で、あまりにサラッと描かれていますが、認知症の高齢者を自宅で支援するということは、生半可な気持ちではできません。

 ただ、「この家族として当たり前の決断」というものもありまして、作中でも、「在宅介護をするのか」とか、「仕事を辞めて介護するのか」とか、「胃ろうを作るのか」とか、決断の場面が多いです。

 このような決断の場面に、可能なら限りの判断材料を用意し、メリットやデメリットを話すことも、福祉専門職の大切な仕事だと思います。同時にこの本を読んで改めて、大切な決断に不正解はなく、「生き様」があるなと思いました。

 例え、本人が答えることができなくても、家族の中で当然と思われる選択肢があるときは、その選択を悔やんだりする必要はないのだと、強く思い、今後私がMSWとして同じような場面に遭遇した際には、この本で感じたことも、伝えていけたらと思います。

おわりに

 認知症は、だれにでも訪れる可能性のかなり高い病気です。だらかこそ、この本はだれにでも読んでほしいと思えるくらい、突き刺さりました。

 読み物としての完成度が高く、福祉関係者もそうでなくても十分に楽しめ、私のように福祉の相談を受ける立場の人間にとっても、参考になったり、改めて、ご家族の形を疎かにしてはいけないという思いを強くさせていただけました。

 余談ですが、登場する福祉職(ケアマネさん、ヘルパーさん、地域包括職員等)が、とても素敵な方々が多く、すごいな~と思うと同時に、なぜか誇らしい気持ちになりました。  

追記

 この本の中で、「緩やかで諦めのつく死」という表現があります。どんどん認知症が進行し、緩やかに体調が悪くなり、家族に介護や決断を迫る時間。病院のMSWとして、患者さんの家族にとって、「緩やかで諦めのつく死」を受け入れる時間が大切だと思うことが多いです。私自身、祖父や父を亡くしたときのことを考えても、緩やかに受容する時間が自分にとって大切だったと感じています。

 あまりに刺さった表現だったことを思い出し、追記させていただきました。

以上、MSW(医療ソーシャルワーカー)ヒナタザウルスのブログでした。

 

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