家庭内暴力をしてしまう方はどこに退院すべきか。【MSWの事例紹介】

事例イラスト 事例編

【事例8】家庭内暴力(いわゆるDV)が明らかな場合、退院調整はどのようにすべきか

 こんにちは、現役MSWのヒナタザウルスです。このブログでは、MSWとして関わった事例や思う事、MSWに関わる本や、あんまり関わらない本も含めて紹介させていただいています。

 今回の事例は、MSW(Medical Social Worker:医療ソーシャルワーカー)として初めてDVの患者様としっかりと関わった事例です。なお、事例に関しては特定を避けるために多くの情報を変えておりますので、一部フィクションであるとご理解いただきながら、実際に自分が相談員だったらと思いながらお読みいただければと思います。

救急の外来に男性高齢者が来院されて

 ある日、高齢者の男性が来院されました。(以後Aさん。80代男性)内科的な疾患があり救急入院となりました。

 そのこと自体は珍しいことではないのですが、印象的だった事は、Aさんは独居であるにも関わらず、来院時には兄弟の方が他に3人も来ていたこと。そして、その3人は事情をいろいろと伺う私に対して「AさんはDVで何度も警察沙汰になっている。そのために他の家族は関わらず、一人暮らしなんだ。今回の救急入院を期に、家に帰さないでほしい」というお話をされました。そして、それだけ言うと、まだ学生の本人から見た孫(以後、Bさん)を残し、3人とも帰っていきました。(以後、1度も来ませんでした。)

お孫さんからゆっくりお話しを伺うと。

 その後、残されたBさんからゆっくりお話しを伺いました。まず、3人の兄弟が話すことは概ね正しく、Aさんは家庭内で暴力をふるってしまう方であり、過去になんども警察の方にお世話になっていること。指導等もあり、妻は完全に別居し、Aさんの知らないところに住んでいること。長男はAさんに愛想をつかして一切関わって下さらないこと。そして、Bさんは次男の子であり、次男も本来はあまりAさんをよく思っていないが、仕方ないと思い、関わってくださっているとのこと。ただ、最近では賃貸のアパートから一切出てくることもなく、食事も、高校生の孫がたまに届けてあげている程度ということでした。ただ、たまに様子を見にくる孫にも暴力をふるおうとしたとのことで、ご自宅での生活はかなり厳しい印象でした。

体調的には退院が可能になるが。

 そこから数日たち、体調だけでみると退院可能になってきました。入院した時に、次男さんと相談し、介護保険の申請だけはしていたので、今後は「自宅」か「介護保険で施設」を悩む段階でした。一人暮らしで限界だと、傍から見ると思われるものの、本人は自宅へ帰る気でいます。また、ご家族は、何度も警察沙汰になっていることを踏まえ、施設に入ってほしいと考えています。非常に悩ましい状況です。

 MSWとしては、「本人の状況が許すなら、本人希望に沿う」と考えており、本人についてもっと知ろうと考えました。

 まず、認知症の度合いです。先生に相談し、リハビリのスタッフに「長谷川式認知症スケール」をしていただきました。認知症の一般的な試験で、30点満点で20点以下は認知症が疑われるというものですが、結果は5点。認知症についても自宅での生活が難しいと思われるものでした。

 次いで、体調です。医療行為はほとんどない状況でしたが、いわゆる「バルーン」尿道カテーテルが入っていました。Aさんが自宅でその管理ができるとも、考えにくものでした。

大切な本人意思はどうか。

 この段階まできても、本人の意思は自宅退院でした。本来であればこういった状況になると、家族に本人の説得していただくしかないのですが、次男はもちろん、高校生の孫が来ても、怒鳴ったり、暴力をふるいそうになるため、先生や病棟のスタッフにお願いし、2週間私に時間が欲しいこと。それで無理であれば、本人意思が尊重されても仕方がないということになりました。

 ※ 認知症や精神疾患で「措置入院」や「措置入所」と呼ばれる本人意思を度外視した入居(及び入院)の手段はあるのですが、今回のような事例では、適応が難しいのが現状です。

信頼できる施設の職員と本人を説得する。

 さて、あとはどうにか本人を説得するしかありません。信頼できる施設の施設長さんと本人を説得する場を設けました。(ご家族には、事前に打ち合わせをしていただきました。)多少、というか、ちょっと厚めにオブラートを利用しながら本人を説得していきます。最後まで、なんとなくの了承ではあったものの、一応の了承を得ることができました。

 私の経験則ではあるのですが、多くの認知症になられた方は、「施設に行きたくない。自宅で過ごしたい」という思いとは裏腹に「自宅で一人は厳しい」という不安感も持っています。

・ 施設か独居かで本人も悩んだ事例 → 第13回 タバコへの依存が支援を壊すこともある。

 本人の不安感に寄り添い、できること、できないことを話していくと、本人も独居に戻ることが難しいとなる事例も多いです。

 今回も同様の流れとはなりました。

おわりに

 「家庭内暴力が」と院内で話題になった事例でしたが、急性期の一般の病院では、措置入所も精神科もないので、家族関係の悪い方の退院調整と考え進めていくことが最善だと思いました。

 このAさんは、この後に施設に入り、初めは少し職員の方々にも高圧的だったようですが、認知症の進行もあるのか、3か月後に伺ったときには、無事に施設に馴染んで過ごされているとのお話でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました