【MSWの事例紹介】望む生き方をしたい。

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【事例21】ご本人と家族の願いが違う。

 こんにちは、現役MSWのヒナタザウルスです。このブログでは、MSWとして関わった事例や思う事、MSWに関わる本や、あんまり関わらない本も含めて紹介させていただいています。

 今回の事例は、MSW(Medical Social Worker:医療ソーシャルワーカー)として、ご本人とご家族の希望の中で、私なりに支援した事例です。なお、事例に関しては特定を避けるために多くの情報を変えておりますので、一部フィクションであるとご理解いただきながら、実際に自分が相談員だったらと思いながらお読みいただければと思います。

気の強いおばあちゃんでした。

 今回は、同敷地内に娘夫婦がいるものの、一軒家に独居されているAさんの事例です。年齢はおよそ90歳、認知症らしい症状はなく、意識はしっかりある患者様でした。

 ただ、検査データ的には数字がすごく悪く、インスリンなど定期的に打ち、体調を管理する必要がありました。ちなみに、娘さん夫婦はかなり近所に住んでらっしゃる状況でした。

 Aさんは、入院と退院を繰り返していました。体調はご自宅でしばらく過ごすとかなり悪くなってしまうため、ある日、主治医の先生と私、家族とご本人で話し合いをしました。

 まず、主治医の先生からは「体調の事を考えると一人暮らしは難しい」ご家族さんからは「施設に入ってほしい。心配だし、最近だけで2回救急車を呼んでいて、大変だ」とのこと。一方で本人は「この歳で慣れ親しんだ家以外のところに行きたくないよ。」とお話されました。

 相談員としては、本人の希望を叶えたいです。ただ、病院に従事する者としては救急で入退院を繰り返している方なので、何とかしなければという想いがあります。

 実際に、ご本人の言い分ももっともですし、本人が救急車沙汰になるたびに、時間も場所も問わず呼ばれるご家族に負担だというご家族の主張ももっともです。

家で一人暮らしに、一番の問題はなにか。

 私はここから、「家に一人で帰ること」の問題について考えました。Aさんは、インスリンの管理。もっと言うと、自分で注射を打つことがうまくコントロールできないという事が問題だと思われました。

 そのため、例えば平日の日中はデイサービスを利用し、休日はご家族にお薬の確認だけをしてもらえたらよいとも考えられます。

 問題はご本人がデイサービスなら行ってくださるのかというところです。私はこういった状況になった場合は、可能な範囲で病棟に行き、雑談等の声かけでもよいので、ご本人にお声かけをするようにします。

 ある日、なんとなく話していると急にご本人から「娘たちのいう事もわかるんだけどさ、田舎の嫁に嫁いで、60年以上そこで暮らして、いまさら知らない人に囲まれて暮らしたくもないよねぇ」とのことです。異論はありません。ただ、私は本当に心配ではあったので「でも、一人で家で過ごすと、体調が管理できなくて、何度もすごく体調悪くなっているよね。昼間だけ、デイサービスとかって行ってみないですか。」とお声かけしました。

 すると、「田中さんとか鈴木さんが行ってるやつね(仮名です。)」とのこと、そのお二人が誰か尋ねると「ご近所でずっと住んでたんだけど、最近あんまり動けなくなって、そのデイサービスとかってのに通っているの。二人が行っているとこなら、知ってる人がいて安心するし、行ってもいいわね。」とのことです。

 ここからは友人二人が行っているとのデイサービスを探しました。と言っても、Aさんにはもともとケアマネージャーさんがついていて、そのご友人さんの話は前にも出ていたようです。すぐにどこのデイサービスかはわかりました。ケアマネージャーさんと相談し、そのデイサービスの枠が取れそうなところで、退院の調整をすることとなりました。

ご家族としては

 ご家族としては「入居」を進めたいようではありましたが、本人の気持ちや考え方を私が捻じ曲げるべきではありませんので、私は「日中はデイサービス」という落としどころを提案しました。

 こういった時によく、「相談員さんから、どうにか本人を説得してくださいよ~ウチの母は、他人のいう事は聞くんだから。」といったことを言われることがあります。確かに、私の祖母も、家族以外の方のいう事の方が、聞いた印象はあります。

 ただ、MSWとして患者さん本人を、本人の意向に関係なく、家族の願う話に頷かせるということはできないですし、すべきではないと思っています。(ご本人の判断力の有無や精神疾患等の有無は前提ですが。)

 結果として、Aさんは、デイサービスを駆使しながら住み慣れた家を中心に生活し、次に入院したときは、数日の入院で他界されました。

 他界される前日に、私が病室を訪ねると、「あの時、家に帰してくれてありがとね」と声をかけてくださいました。

おわりに

 いまブログにまとめると、ちょっといい話のようで、自分のなかで驚く部分があります。

 正直なところ「わがまま」なおばあちゃんでした。娘さんは結構なご年齢のAさんと、20代のように言い合いをされ、私がたじろぐこともありました。

 また、私の立場で言えば、入院日数を短くしなければと言われているのにちょっと遠回りに見える支援をしたり、「家族も希望しているのだからとりあえず施設に入ってもらおう」という声も聞こえ、葛藤したりもした事例でした。一言でいえば、苦労しました。

 なのに、今となってはAさんがねぎらってくれた言葉を思い出すので、私の脳内変換もいい加減なものですね。

以上、MSW(医療ソーシャルワーカー、社会福祉士)ヒナタザウルスのブログでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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