【MSWの事例紹介】希望にどこまで添えたのだろうか。

事例イラスト 事例編

【事例20】相談する人が私しかいなかった方です。

 こんにちは、現役MSWのヒナタザウルスです。このブログでは、MSWとして関わった事例や思う事、MSWに関わる本や、あんまり関わらない本も含めて紹介させていただいています。

 今回の事例は、MSW(Medical Social Worker:医療ソーシャルワーカー)として、ご本人の希望にどこまで添えたのかなと、思ってしまう事例です。

 なお、事例に関しては特定を避けるために多くの情報を変えておりますので、一部フィクションであるとご理解いただきながら、実際に自分が相談員だったらと思いながらお読みいただければと思います。

ご自宅でギリギリで生活されていた方です。

 今回の事例は、80代の女性、Aさん。もともとは自宅で生活保護を受けながら生活されていました。Aさんは肺が悪く、自宅で過ごしているときから、「在宅酸素」(鼻の前に透明な管を取り付け、酸素を多く吸えるようにする機械)を設置しており、生活をするときには酸素ボンベ(最近ではかなり小さく、持ち運べるものも多いですが。)を持ち歩く生活をしていました。

 ただ、体調と加齢の影響もあり入院を繰り返すようになり、主治医の先生からも「ご自宅での生活はなかなか大変そう」というお話を受けていました。

 ご自身でも「家は無理ね。すこし家事したらハアハアしちゃうし、急に体調悪くなった時に誰にも気づいてもらえないの、怖いもの。」ともお話されていました。

 私は、ご本人と何度かお話し、支援を考えていました。初回入院時には要支援1だった介護保険も、区分変更をして要介護2となっていました。ご本人は「好き勝手やってきたから、家族もいないし、生活保護なのよ。好きに過ごしてきたけど、もう施設とかに入りたいわ。」と仰っていました。

 私は、ご本人と生活保護の担当の方と相談し、地域で生活保護の方(かつ、酸素の管理が必要な方)を受け入れてくださる有料老人ホームをご紹介し、退院後はそちらに入所されました。

 Aさんは、口癖が「悪いわね」なのかと思うほど、私が何かをすると言葉をかけてくださり、たまに冗談などもいってくださる方でした。

しばらくして、再度入院されました。

 その後しばらくすると、再度Aさんは入院されました。やはり少しずつ体調が悪くなっている様子でした。投与される酸素の量も増え、入院してきた時には口から食事をとることもできませんでした。

 私はほとんど毎日Aさんにお声かけをしているのですが、ある日、ご本人から少しお話をされました。

 内容は、「私はもう長くないと思うんだけど、今いる施設があんまり好きじゃないのよね。紹介してくれたのに悪いんだけど。それに最後は病院がいいわ。本当はこの病院にずっといたいけど、ダメなんでしょう?ほかに、いいとこない?」とのことでした。

 Aさんを支援するチームの中では、以前から、有料老人ホームより、療養型の病院の方がよいかもしれないという話もでていたので、私はそれであればと療養型病院に相談させていただくとお話ししました。(ちなみに、この時には私が勤めていた急性期の病院に長く入院できないかという話もでたのですが、実際には難しい状況でした。)

 その後、本人、生活保護の担当者さんと再度相談を重ね、療養型の病院へ転院で行かれることとなりました。ご本人はかなり苦しそうに呼吸しながら「ありがとね。あなたには、本当にお世話になったわ。いい人でよかった。」と言ってくださいました。

 私はむしろ、療養型病院がAさんの期待しているような場所でなかったらどうしようという思い、思わずAさん自身に「期待しているような場所じゃなかったら申し訳ない。もし困ったら、行先の療養型病院の相談員さんを通じて連絡してほしい。」と伝えました。ご本人は笑いかけてくださるだけでした。

後日談として

 転院して1ヵ月ほどたつころ、転院先の病院から他界されたご連絡をいただきました。

 私の名前を転院先の病院でもたまに出されたとのことで、わざわざ転院先の相談員さんが私に連絡をくださいました。ありがたいことです。

 そして、最後に笑いかけてくださったAさんは、一番ご自身の体調を自覚されていたように思います。

 MSWとして相談に乗るのは私なのに、学ぶことの多い患者様でした。

おわりに

 今回の事例をブログにしながら、再認識したことがあります。語弊を恐れず言えば、「家族がいない」ことがむしろ、本人の希望を叶えやすい事があるいう事です。

 患者さんのみと相談し、選択肢を探すことができれば、アクションは当然早くなります。「本人に意識があり、意思決定ができる」前提があれば、本人が独り身である方が、本人の希望を早く叶えることができるかもしれません。

 ただ、Aさんに同居されているご家族がいらしたら「家で最期を迎えたい」とおっしゃったかもしれませんし、やはり正解や不正解があるものではないですね。

 私にとって学びの多かった事例を紹介させていただきました。

生活保護の方の、他の事例 

  → 【MSWの事例紹介】身寄りなしってなんだろう。

  → 【MSWの事例紹介】身寄りのない生活保護の方が入院してきたら。 

  → 【MSWの事例紹介】転んだ貴方は、だれですか。

以上、MSW(医療ソーシャルワーカー、社会福祉士)ヒナタザウルスのブログでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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